第4回クラウドごった煮( #cloudmix )へ行ってきました

金曜の夜、第4回クラウドごった煮という勉強会へ行ってきました。

参加目的は、こんなところです。

  • 国内クラウドベンダの雰囲気やビジネスについて、各社のイメージをぼんやり掴む
  • クラウドベンダの中の人たちの話を聴いて、何か考える材料にする
  • クラウドベンダを比較するための観点を得る

ブログを書くまでがごった煮らしいので、個人的なメモと所感のノートを載せておきます。togetterと照合したりはしていないので、間違いがあるかもしれません。

「最近のクラウド事情 総まとめ」

海外クラウドベンダー、Amazon AWSGoogle App EngineWindows Azureの直近動向の紹介。

# 予定があったので、開始時刻の17時に間に合わず、3番目に発表だったAzureの話から聴きました。AWSはust録画を視聴。

Amazon Web Services: 片山([twitter:@c9katayama])さん
  • US専用の新しいリージョン: AWS GovCloud
    • これまでのAWSのセキュリティ、ファシリティの機構を活用して作った
    • 米国政府が使っているのと同じ品質のクラウドを他のユーザも使っているという意味
  • プライベートネットワークサービスが東京でも利用可能に(VPC
  • 専用線接続、日本でも数ヶ月以内に開始(Direct Connect)
  • アカウント管理サービスが他の認証と連携可能に(IAMのフェデレーション)
  • ベンダーライセンスのAWS持込み("Bring Your Own License")
  • Memcached互換のインメモリキャッシュサービス開始(ElastCache)
  • Javaのデプロイ環境がリモートデバッガに対応した(Beanstalk)

1ヶ月前になかったサービスが今あることと、それらを使ったビジネスがすでにあること。

Google App Engine: 小川さん

ust録画なしでしょうか。見つけられず。。。

Windows Azure: 勇大地さん

今年はAzureのアップデートが頻繁。

  • 2011年7月から、受信データ転送無料化
  • Azureと他サービスをVPNで接続可能にした
  • App Fabricのキャッシュ機能の正式リリース

今年はAzure本体の機能アップデート以上に、他のサービスとの連携やOSS(言語)対応が活発かもしれない。

Azureは、クレジットカード登録不要で30日間無料で使えるキャンペーンをしている。

クラウドのコミュニティ事情

オープンソースクラウド最新動向とコミュニティ」:荒井([twitter:@kimotuki])さん

Eucalyptus、OpenStack、CloudStackの概要、最新動向、ユーザ会の紹介。

オープンソースクラウド基盤ソフトウェア 開発の歴史」によると、2010年5月がターニングポイント。ここでOpenStackやCloudStackが出てきた。

  • Eucalyptus
    • 最初に出てきたIaaS基盤ソフトウェア
    • AWS互換
    • バージョン3.0が8月に登場
  • OpenStack
    • Nova、Swift、Glance("OpenStack Image Registry and Delivery")
    • 特徴は、多くの組織が開発にかかわっていること
  • CloudStack
    • ロードバランサやファイアーウォールを標準装備
    • Citrixに買収された(が、CloudStackにかかわっていた人たちは、皆Cloud Platform Product Groupになった)
    • 最近、フルオープンソース化を宣言
    • IPv6対応したバージョン3.0が、12月に出るかも

(所感)

多くの組織が開発にかかわっているのがOpenStackの特徴。…ということは、このプロダクトから、APIやイメージデータフォーマットなどの標準化動向が生まれてきそうなものですが、現実はそうでもないですよね…どうなるんでしょう。

買収されてオワコンかと思ったCloudStackのフルOSS化は、改めて朗報だと思いました。

「女子会関連」: 安東([twitter:@sao_a])さん

IT業界でも女子会が流行っているというお話と、その中でもクラウドに関連するコミュニティであるGoogleAmazonとAzureの女子ユーザ会の紹介でした。

ニッポンのクラウドに質問

国内クラウドベンダー6社による自社ビジネスの紹介

BIGLOBEクラウドホスティング: 関根さん、南江さん

  • 日本品質を追求する
    • 業界最高水準のサーバ稼働率、豊富なセキュリティオプション

BIGLOBEクラウドTwitterアカウントで、にぎやかしをしている。

(所感)

BIGLOBEクラウドさんのアカウントをフォローしたら、「こんばんわ!BIGLOBEのマミです」というダイレクトメッセージが届いて、ある意味ドキドキしました。

IDCフロンティア: 寺門さん

OSSのCloudStackを採用。

外部と親和性の高いOSSを活用して、クラウドのエコシステムに溶け込みたい。

世界標準クラウド、多様なバリエーション、日本品質の信頼性

物理マシンに仮想マシンを1つ置いて占有するサービスが好評。物理I/Oを心配せずに使える。

  • ダッシュボードのキャプチャ
    • 利用料が一目で分かる
    • 先月との比較
    • 設定した予算でアラート
    • 監視情報のグラフ化

クラウドシナプスのようであるべき、という理想。他社サービスとゆるくつながり、必要がなくなったら切り離す、という戦略。

(所感)

ダッシュボードの作り込みが、インターネットバンキングや資産管理のWebサービスを彷彿とさせるユーザインタフェースで、感心しました。

IIJ GIO: 喜多([twitter:@real_honey])さん、堂前([twitter:@donz80])さん

IIJISP事業は、この20年間で100%から25%へ。

2000年にやっていたリソースオンデマンドサービスを、クラウドサービスと名前を変えて提供。

IIJ GIOの売上実績としては、約2万コアくらい出荷している。

GMOクラウド: 土居([twitter:@znrk])さん

仮想サーバのサイズを自由に決められる。オートスケールアップ、アウト。

基本利用料+従量課金制。950円からで、個人も使いやすい。

LB、FWもある。APIはまだないがそのうち出したい。

さくらのクラウド: 田中([twitter:@kunihirotanaka])さん

まだリリース前だが、「開発者志向のシンプルクラウド」にする予定。

  • 高性能な仮想サーバ
  • ネットワーク拡張性高い
  • (使った後=チェックアウト時ではなく)チェックイン時に値段がわかる
  • API標準搭載

# AWSの半額以下というのは、正式発表ではなく、一人歩きしている言葉らしい。

ISOイメージからでも、オンラインでも、仮想サーバを作れる。デモ。

ニフティクラウド: 山口([twitter:@meryo2000])さん

導入実績はすでに900社以上。

アップデートの紹介。

  • VPNサービス、ファイアウォール
  • 受信だけでなく送り出すほうも10TBまで無償化
  • コントロールパネルのセキュリティ確保のために、2要素認証、パターン認証を導入
  • コンソールがついた
  • Oracleが使えるようになった
  • イメージ共有できるようになった

(所感)

コントロールパネルのセキュリティは、問題設定の目のつけどころが素晴らしいと思いました。運用しているとたしかに気になります。

AWSの機能を追いかけつつ、ないものを追加されているという印象を受けました(開発力があるんだろうなぁ・・・)。

パネルディスカッション編

モデレーターは、Publickey(http://www.publickey1.jp/)の新野([twitter:@publickey])さん。

「自社サービスの弱みと強みを教えてください」という各社への宿題回答。

クラウドサービス 弱み 強み
BIGLOBE 広告宣伝費が足りない セキュリティのオプションサービス
GMO ユーザインタフェース リソースを自由に組み合わせられる仮想サーバ
IDC 独自開発した技術がない 世界中の良いもの、オープンなものを組み合わせていける
IIJ 仮想サーバの提供の仕方が固定的 商品でカバー。仮想と物理、WANとLANの混在も可能
さくら クラウドといいつつ、IaaSしかない インフラから購買まで自社で完結。上から下までトータルでみている。
ニフティ IaaSがメイン。カスタマイズ性が低い 事例や問い合わせ(これまでに1万2、3千件)が蓄積され、フィードバックできる状態になった

ここから、モデリストからの質問。

――価格について。

(さくら)価格は他社を見て決めるのではなく、自社で決める。さくらの強みは、安く出してきてそこそこ使えるだろう、というイメージがすでにあること。

――価格とリソース、どちらから決めるのか。

(さくら)両方から決める。価格は下げられそうなら最初から下げておく。そうすれば、その後ずるずる下げさせられずにすむ。価格ありきでサイジングしていき、サービスを載せて値段を上げる。

GMOクラウドも、ホスティング価格の下落と似た道をたどるのでは。価格を下げるといっても限界はあると思う。われわれがどうやって利益を得るか考える必要がある。感触としては、あと1年半〜2年で、今より2、3割で下がるのでは。

――IIJさんは松枝にモジュール型データセンターを設立した。価格をどうやって下げていくか?

IIJ・喜多さん)データセンターの原価は、機械、運用人件費、ファシリティの3つ。電気代は一定以上下がらない。コンテナ型データセンターに着手して、コスト構造を変えることにした。一企業だけではできない形の投資。

――安くするばかりでは辛いでしょう。お客さんに買ってもらうための付加価値はどう考えるか?

IIJ・喜多さん)IaaSは底値まで下がりきるだろう。今は、安いから(クラウドを)使うという感覚だと思うが、自分たちで持つよりも便利で、安心して使える、という力学に変わっていく瞬間がくると思う。クラウドに置いた方が、止まらない、速い、というようにいずれ変わるはず。

IIJ・堂前さん)IIJは、PaaSにも手をだしている。バリエーションを出していきたい。

BIGLOBE)価格の低下には追随していかなければならないと思っている。また、IaaSとSaaSを個人・法人に提供していきたい。

IDC)データセンターを持っているので、プライベートクラウドパブリッククラウドの融合で、価値を提供できる。

ニフティクラウド)お客様のビジネスの役に立つかどうかを重視する。イメージ配信、Oracle、SIが売りたいものが売れるかどうか、などは、まさにそこに着目している。

(さくら)低付加価値戦略も海外と戦うには必要。

――信頼性について。

BIGLOBENECはコンピュータと通信でやってきた。NECビルディングという純正の保守会社も持っている。日本品質を提供していきたい。

――サーバベンダーとかなり一体化していてアベイラビリティに強い、というお話だと思うが、IIJさんとニフティさんは、NECさんの言い分をどう聞くか。

IIJ・喜多さん)ハードウェアと一体化することだけに頼らずに、当たり前に信頼性を確保できるようになってきたので、メーカでないサービサーでも、クラウドビジネスができるようになってきた。それらはお客さんには見せないところでがんばるものだと思う。

IIJ・堂前さん)IIJは、ハードウェアにコミットできてないわけではない。ベンダーとやりとりする中で、提案した機能を取り入れてもらうことをしている。非メーカー系のクラウドベンダーは、メーカー系でないからこそ、そのあたりができる面もある。

ニフティ)ハードを持っていることは品質につながるか、という話だが、ニフティはサーバをマルチベンダーで揃えている。他社の製品の性能も見ていかないといけない。

――生き残り戦略について。グローバルプレイヤーとどうやって戦っていくのか、あるいは、生き残るか。

ニフティ)グローバルプレイヤーの資本力、規模と真正面から対抗するのはムリ。ゲームを変える。

(さくら)スケールメリットと柔軟性で勝負。開発力やワールドワイドのプロモーションでは、AWSに勝てない。対抗できる部分、たとえば、データセンターのインフラや、ネットワーク・サーバのコストなどに、ピンポイントで取り組む。日本の運用の人は、当たり前のことを当たり前にやってくれるのが強み。
IIJ)AT&T(の日本国内ネットワーク事業)を買収して傘下におさめ、海外展開をはじめている。データセンターを自分たちで作ってみたらPUE(Power Usage Effectiveness:電力使用効率)も1.07くらいで、そこそこ良い。レッドオーシャンを泳ぎきる、と言い切るのは怖いがそんな感じ。あとは「カバレッジ」。Ruby PaaS を手がける、かも。IaaSだけで大丈夫かという話もあるので、WANの直収、物理サーバとの連携なども提供する。海外ベンダのクラウドをデフォルトとするのでなく、お客さんが欲しいというサービスを入れていく。

IDC)CloudStackを採用したこともあり、外のベンダーとも連携していきたい。

GMO)インフラ基盤のパートナーは海外ベンダー。世界でやっていくことを視野に入れてやっている

BIGLOBE)サポート力や日本ならではの対応が強み。お客様との信頼関係が大事。それなりの品質を保ったIaaSで、企業が本格的に安心して使えるものを提供していきたい。また、BIGLOBEは日本のプロバイダ事業であり、海外には出て行かないが、プライベートクラウドは別ブランドを立ち上げている。これは、英語版でアジア圏を視野に入れている。

質疑応答

ナイーブな内容なので(嘘)メモは省略します。Togetterをどうぞ。http://togetter.com/li/185854

(所感)

さくらの田中さんのお話に出てきた「ビットに対して提供しているのにアトムで引っかかる」という話が出てくるという「フリー」は、書籍の『FREE』かな? 気になったので、今度見てみよう。

全体メモ

感じたことを箇条書きで。

その1。大人数でした。参加者は、クラウドサービスプロバイダーの中の人、そのまわりで飯を食べている人、そうじゃないけど関心がある開発者/ユーザ、あたりだと思います。実際にはどうなんでしょうね。

その2。多くのベンダーの方が「日本品質」に言及されていました。人や会社によって指しているものが違うと思うので、実生活で相手が「日本品質」と言い出したら、定義を確認しようと思いました。製造業的な、つまり不良品を抑えるという日本品質の定義もあれば、運用担当の業務遂行能力という定義もあります。

その3。パネルディスカッションのモデレータをされた新野さんが素晴らしかったです。各社への事前の宿題も、会場での質問も、登壇された方の言葉を補足してくださるところも。モデレータが実力のある人だと、パネルって面白いんだなと再認識しました。

その4。さくらの田中社長のお話が興味深かったので、発言やブログをフォローしようと思いました。

その5。IDCさんの理念は素敵だと思いました。同じようにCloudStackを採用した外のベンダーと連携していく、と何度もおっしゃっていたけど、具体的にはどんなことをされるのか、今後が気になります。

・・・と、そんなところでした。

面白い3時間でした。ありがとうございました。