第4回クラウドごった煮( #cloudmix )へ行ってきました
金曜の夜、第4回クラウドごった煮という勉強会へ行ってきました。
- 第4回 クラウドごった煮 on Zusaar http://www.zusaar.com/event/agZ6dXNhYXJyDQsSBUV2ZW50GJnmBQw
- 20110909_第4回クラウドごった煮(#cloudmix ) http://togetter.com/li/185854
参加目的は、こんなところです。
ブログを書くまでがごった煮らしいので、個人的なメモと所感のノートを載せておきます。togetterと照合したりはしていないので、間違いがあるかもしれません。
「最近のクラウド事情 総まとめ」
海外クラウドベンダー、Amazon AWS、Google App Engine、Windows Azureの直近動向の紹介。
# 予定があったので、開始時刻の17時に間に合わず、3番目に発表だったAzureの話から聴きました。AWSはust録画を視聴。
Amazon Web Services: 片山([twitter:@c9katayama])さん
- US専用の新しいリージョン: AWS GovCloud
- プライベートネットワークサービスが東京でも利用可能に(VPC)
- 専用線接続、日本でも数ヶ月以内に開始(Direct Connect)
- アカウント管理サービスが他の認証と連携可能に(IAMのフェデレーション)
- ベンダーライセンスのAWS持込み("Bring Your Own License")
- Memcached互換のインメモリキャッシュサービス開始(ElastCache)
- Javaのデプロイ環境がリモートデバッガに対応した(Beanstalk)
1ヶ月前になかったサービスが今あることと、それらを使ったビジネスがすでにあること。
Google App Engine: 小川さん
ust録画なしでしょうか。見つけられず。。。
Windows Azure: 勇大地さん
今年はAzureのアップデートが頻繁。
- 2011年7月から、受信データ転送無料化
- Azureと他サービスをVPNで接続可能にした
- App Fabricのキャッシュ機能の正式リリース
今年はAzure本体の機能アップデート以上に、他のサービスとの連携やOSS(言語)対応が活発かもしれない。
Azureは、クレジットカード登録不要で30日間無料で使えるキャンペーンをしている。
クラウドのコミュニティ事情
「オープンソースクラウド最新動向とコミュニティ」:荒井([twitter:@kimotuki])さん
Eucalyptus、OpenStack、CloudStackの概要、最新動向、ユーザ会の紹介。
「オープンソースクラウド基盤ソフトウェア 開発の歴史」によると、2010年5月がターニングポイント。ここでOpenStackやCloudStackが出てきた。
- Eucalyptus
- 最初に出てきたIaaS基盤ソフトウェア
- AWS互換
- バージョン3.0が8月に登場
- OpenStack
- Nova、Swift、Glance("OpenStack Image Registry and Delivery")
- 特徴は、多くの組織が開発にかかわっていること
- CloudStack
(所感)
多くの組織が開発にかかわっているのがOpenStackの特徴。…ということは、このプロダクトから、APIやイメージデータフォーマットなどの標準化動向が生まれてきそうなものですが、現実はそうでもないですよね…どうなるんでしょう。
買収されてオワコンかと思ったCloudStackのフルOSS化は、改めて朗報だと思いました。
ニッポンのクラウドに質問
国内クラウドベンダー6社による自社ビジネスの紹介
- 日本品質を追求する
- 業界最高水準のサーバ稼働率、豊富なセキュリティオプション
BIGLOBEクラウドのTwitterアカウントで、にぎやかしをしている。
(所感)
BIGLOBEクラウドさんのアカウントをフォローしたら、「こんばんわ!BIGLOBEのマミです」というダイレクトメッセージが届いて、ある意味ドキドキしました。
IDCフロンティア: 寺門さん
OSSのCloudStackを採用。
外部と親和性の高いOSSを活用して、クラウドのエコシステムに溶け込みたい。
世界標準クラウド、多様なバリエーション、日本品質の信頼性
物理マシンに仮想マシンを1つ置いて占有するサービスが好評。物理I/Oを心配せずに使える。
- ダッシュボードのキャプチャ
- 利用料が一目で分かる
- 先月との比較
- 設定した予算でアラート
- 監視情報のグラフ化
クラウドはシナプスのようであるべき、という理想。他社サービスとゆるくつながり、必要がなくなったら切り離す、という戦略。
(所感)
ダッシュボードの作り込みが、インターネットバンキングや資産管理のWebサービスを彷彿とさせるユーザインタフェースで、感心しました。
IIJ GIO: 喜多([twitter:@real_honey])さん、堂前([twitter:@donz80])さん
2000年にやっていたリソースオンデマンドサービスを、クラウドサービスと名前を変えて提供。
IIJ GIOの売上実績としては、約2万コアくらい出荷している。
GMOクラウド: 土居([twitter:@znrk])さん
仮想サーバのサイズを自由に決められる。オートスケールアップ、アウト。
基本利用料+従量課金制。950円からで、個人も使いやすい。
LB、FWもある。APIはまだないがそのうち出したい。
さくらのクラウド: 田中([twitter:@kunihirotanaka])さん
まだリリース前だが、「開発者志向のシンプルクラウド」にする予定。
- 高性能な仮想サーバ
- ネットワーク拡張性高い
- (使った後=チェックアウト時ではなく)チェックイン時に値段がわかる
- API標準搭載
# AWSの半額以下というのは、正式発表ではなく、一人歩きしている言葉らしい。
ISOイメージからでも、オンラインでも、仮想サーバを作れる。デモ。
ニフティクラウド: 山口([twitter:@meryo2000])さん
導入実績はすでに900社以上。
アップデートの紹介。
- VPNサービス、ファイアウォール
- 受信だけでなく送り出すほうも10TBまで無償化
- コントロールパネルのセキュリティ確保のために、2要素認証、パターン認証を導入
- コンソールがついた
- Oracleが使えるようになった
- イメージ共有できるようになった
(所感)
コントロールパネルのセキュリティは、問題設定の目のつけどころが素晴らしいと思いました。運用しているとたしかに気になります。
AWSの機能を追いかけつつ、ないものを追加されているという印象を受けました(開発力があるんだろうなぁ・・・)。
パネルディスカッション編
モデレーターは、Publickey(http://www.publickey1.jp/)の新野([twitter:@publickey])さん。
「自社サービスの弱みと強みを教えてください」という各社への宿題回答。
クラウドサービス | 弱み | 強み |
---|---|---|
BIGLOBE | 広告宣伝費が足りない | セキュリティのオプションサービス |
GMO | ユーザインタフェース | リソースを自由に組み合わせられる仮想サーバ |
IDC | 独自開発した技術がない | 世界中の良いもの、オープンなものを組み合わせていける |
IIJ | 仮想サーバの提供の仕方が固定的 | 商品でカバー。仮想と物理、WANとLANの混在も可能 |
さくら | クラウドといいつつ、IaaSしかない | インフラから購買まで自社で完結。上から下までトータルでみている。 |
ニフティ | IaaSがメイン。カスタマイズ性が低い | 事例や問い合わせ(これまでに1万2、3千件)が蓄積され、フィードバックできる状態になった |
ここから、モデリストからの質問。
――価格について。
(さくら)価格は他社を見て決めるのではなく、自社で決める。さくらの強みは、安く出してきてそこそこ使えるだろう、というイメージがすでにあること。
――価格とリソース、どちらから決めるのか。
(さくら)両方から決める。価格は下げられそうなら最初から下げておく。そうすれば、その後ずるずる下げさせられずにすむ。価格ありきでサイジングしていき、サービスを載せて値段を上げる。
(GMO)クラウドも、ホスティング価格の下落と似た道をたどるのでは。価格を下げるといっても限界はあると思う。われわれがどうやって利益を得るか考える必要がある。感触としては、あと1年半〜2年で、今より2、3割で下がるのでは。
――IIJさんは松枝にモジュール型データセンターを設立した。価格をどうやって下げていくか?
(IIJ・喜多さん)データセンターの原価は、機械、運用人件費、ファシリティの3つ。電気代は一定以上下がらない。コンテナ型データセンターに着手して、コスト構造を変えることにした。一企業だけではできない形の投資。
――安くするばかりでは辛いでしょう。お客さんに買ってもらうための付加価値はどう考えるか?
(IIJ・喜多さん)IaaSは底値まで下がりきるだろう。今は、安いから(クラウドを)使うという感覚だと思うが、自分たちで持つよりも便利で、安心して使える、という力学に変わっていく瞬間がくると思う。クラウドに置いた方が、止まらない、速い、というようにいずれ変わるはず。
(IIJ・堂前さん)IIJは、PaaSにも手をだしている。バリエーションを出していきたい。
(BIGLOBE)価格の低下には追随していかなければならないと思っている。また、IaaSとSaaSを個人・法人に提供していきたい。
(IDC)データセンターを持っているので、プライベートクラウドとパブリッククラウドの融合で、価値を提供できる。
(ニフティクラウド)お客様のビジネスの役に立つかどうかを重視する。イメージ配信、Oracle、SIが売りたいものが売れるかどうか、などは、まさにそこに着目している。
(さくら)低付加価値戦略も海外と戦うには必要。
――信頼性について。
(BIGLOBE)NECはコンピュータと通信でやってきた。NECビルディングという純正の保守会社も持っている。日本品質を提供していきたい。
――サーバベンダーとかなり一体化していてアベイラビリティに強い、というお話だと思うが、IIJさんとニフティさんは、NECさんの言い分をどう聞くか。
(IIJ・喜多さん)ハードウェアと一体化することだけに頼らずに、当たり前に信頼性を確保できるようになってきたので、メーカでないサービサーでも、クラウドビジネスができるようになってきた。それらはお客さんには見せないところでがんばるものだと思う。
(IIJ・堂前さん)IIJは、ハードウェアにコミットできてないわけではない。ベンダーとやりとりする中で、提案した機能を取り入れてもらうことをしている。非メーカー系のクラウドベンダーは、メーカー系でないからこそ、そのあたりができる面もある。
(ニフティ)ハードを持っていることは品質につながるか、という話だが、ニフティはサーバをマルチベンダーで揃えている。他社の製品の性能も見ていかないといけない。
――生き残り戦略について。グローバルプレイヤーとどうやって戦っていくのか、あるいは、生き残るか。
(ニフティ)グローバルプレイヤーの資本力、規模と真正面から対抗するのはムリ。ゲームを変える。
(さくら)スケールメリットと柔軟性で勝負。開発力やワールドワイドのプロモーションでは、AWSに勝てない。対抗できる部分、たとえば、データセンターのインフラや、ネットワーク・サーバのコストなどに、ピンポイントで取り組む。日本の運用の人は、当たり前のことを当たり前にやってくれるのが強み。
(IIJ)AT&T(の日本国内ネットワーク事業)を買収して傘下におさめ、海外展開をはじめている。データセンターを自分たちで作ってみたらPUE(Power Usage Effectiveness:電力使用効率)も1.07くらいで、そこそこ良い。レッドオーシャンを泳ぎきる、と言い切るのは怖いがそんな感じ。あとは「カバレッジ」。Ruby PaaS を手がける、かも。IaaSだけで大丈夫かという話もあるので、WANの直収、物理サーバとの連携なども提供する。海外ベンダのクラウドをデフォルトとするのでなく、お客さんが欲しいというサービスを入れていく。
(IDC)CloudStackを採用したこともあり、外のベンダーとも連携していきたい。
(GMO)インフラ基盤のパートナーは海外ベンダー。世界でやっていくことを視野に入れてやっている
(BIGLOBE)サポート力や日本ならではの対応が強み。お客様との信頼関係が大事。それなりの品質を保ったIaaSで、企業が本格的に安心して使えるものを提供していきたい。また、BIGLOBEは日本のプロバイダ事業であり、海外には出て行かないが、プライベートクラウドは別ブランドを立ち上げている。これは、英語版でアジア圏を視野に入れている。
質疑応答
ナイーブな内容なので(嘘)メモは省略します。Togetterをどうぞ。http://togetter.com/li/185854
(所感)
さくらの田中さんのお話に出てきた「ビットに対して提供しているのにアトムで引っかかる」という話が出てくるという「フリー」は、書籍の『FREE』かな? 気になったので、今度見てみよう。
全体メモ
感じたことを箇条書きで。
その1。大人数でした。参加者は、クラウドサービスプロバイダーの中の人、そのまわりで飯を食べている人、そうじゃないけど関心がある開発者/ユーザ、あたりだと思います。実際にはどうなんでしょうね。
その2。多くのベンダーの方が「日本品質」に言及されていました。人や会社によって指しているものが違うと思うので、実生活で相手が「日本品質」と言い出したら、定義を確認しようと思いました。製造業的な、つまり不良品を抑えるという日本品質の定義もあれば、運用担当の業務遂行能力という定義もあります。
その3。パネルディスカッションのモデレータをされた新野さんが素晴らしかったです。各社への事前の宿題も、会場での質問も、登壇された方の言葉を補足してくださるところも。モデレータが実力のある人だと、パネルって面白いんだなと再認識しました。
その4。さくらの田中社長のお話が興味深かったので、発言やブログをフォローしようと思いました。
その5。IDCさんの理念は素敵だと思いました。同じようにCloudStackを採用した外のベンダーと連携していく、と何度もおっしゃっていたけど、具体的にはどんなことをされるのか、今後が気になります。
・・・と、そんなところでした。
面白い3時間でした。ありがとうございました。