IDの秘密

ノスタルジックな表紙絵のこの本。

IDの秘密 (丸善ライブラリー―情報研シリーズ)

IDの秘密 (丸善ライブラリー―情報研シリーズ)

著者の方のtweetsを見て興味を持ち、昼休みに少しずつ読みました。

知らなかった知識や持ったことのなかった視点を色々と得ることができました。

IDにまつわる様々なこと

IDがあるところには、物理的な読み取りの問題や、論理的な運用管理の問題が、かならず一緒に存在します。そのことが、この本では、たくさんの具体例を使って分かりやすく解説されています。

ビジネス論で、よく「組織図にはその会社の戦略や価値観が現れる」といいますが、IDにもまた、そのID体系を採用したシステムやサービスの戦略や価値観が如実に反映されるのですね。

また、中盤に登場する「ICタグの普及が進まなかった裏事情」が、面白かったです。バーコードで十分な用途に対してICタグを使おうとして、導入コストと効果のバランスが折り合わなかったという話や、ビジネスモデルの欠如から、関係者間で責任範囲や運用体制を整理しきれなかったという話などは、まるでRDBで十分な用途に分散DBを持ち込んで失敗している、現代の寓話のようですらあります。まあそれは言い過ぎかもしれませんが、他人事にもかかわらず、既視観を覚えました ;)

ありそうで稀有なテーマ

類書がないから書いたとのことですが、たしかにないだろうなと思いました。IDという切り口で、ハードウェア、ソフトウェア、サービス、社会といった複数のレイヤーを横断的に扱える専門家は、その数自体がおそらく少ないのではないでしょうか。

ID読取り機器の作成・調達コストの問題、IDの読み取り速度や認証方式の現実性の問題、IDの重複や桁数などの体系の問題、ID利用にあたってのセキュリティの問題……などなど、IDにまつわる多様な視点が紹介されています。

大量のコラム

この本では、約250ページの本文の中に、コラムが40個以上も入っています。コラムで扱われる内容は非常に幅広く、学研のひみつシリーズみたいだと感じました。

たとえば、Suicaの"タッチ&ゴー"というキャッチコピーのせいで、改札機にSuica付き携帯電話を叩きつける人がたくさんいたために、携帯電話を頑丈に設計しなければならなかった話など、「へー!」の連続でした。

最後に

著者の方のtweetsを引用しておきます。