Nice Fusion! 「DevLOVE2009 Fusion」へ行ってきた

土曜日、DevLOVE2009 Fusionへ参加してきました。

楽しかったです。参加された方、papandaさんをはじめスタッフの皆さん、Nice Fusion and Thank you!

倉貫さんのセッション、世界一言語トークス、萩本さんのセッションに参加しました。

以下は、備忘メモ+感想です。

倉貫義人さん「ソフトウェア開発から見た『ソフトウェアをサービスするビジネス』」

SIerの事業部での顧客向け開発、本部での自社向け開発(ユーザ企業の情報システム部に似た位置)、社内ベンチャーでのサービス開発を経験された倉貫さんが、サービスするビジネスから得た発見に関するお話。

SonicGardenは、サービス利用とカスタマイズ性を両方提供している珍しい会社とのことです。

1. Point of Use

サービス業で重要な考え方が、「Point of Use」

  • Point of Sales
    • 構築を経て購入があり、償却されていく。製造業的な、従来のシステムの提供方法。
  • Point of Use
    • すぐに利用開始できて、価値が継続する。サービス業で必要なシステム提供方法。

SaaSはコストを下げるものではなく、時間を買うもの。利用開始までの時間が短縮され、初期費用を抑えられる。ただし、カスタマイズ可能な範囲の制限や、資源を他と共有することによる制限が存在する。

2. サステナビリティ

クラウドサービスでは、システムのサステナビリティ(持続可能性)を重視する。

納品して終わりではなく、「ユーザがサービスにアクセスした瞬間、いつでもちゃんと使えること」を実現する。サービスダウンを気にする。

3. 保守容易性

クラウドサービスでの開発プロセスは、これまでと異なる。より軽く、より小回りが利いて、本質的な部分だけを扱えるサービスを使っている。

4. 小口化

クラウドサービスでは、マネジメントも異なる。

まず、品質の考え方が違う。パレートの法則でいうところの8割のサービスレベルを毎日継続するのがサービス業の考え方。8割を10割にしようとするのが、製造業の考え方。また、要件どおりではダメで、ホスピタリティが重要である。

次に、組織の考え方が違う。PDCAを早く繰り返したいため、仕事の内製化と役割分担を進めた。

  • 指示で上手くいくのは、大企業
  • 提言と議論と納得で回るのが、ベンチャー

最後に、「小さいことは良いこと」という指針がある。小さな組織になると、プログラママーケティングを考えたり、営業が開発の中のことまで考えたりするようになった。各自が自分で責任を持つという姿勢が強くなった。

  • 小さくレビュー、小さくふりかえりをすると、何度もやることになって良い
  • リリースの間隔が小さくなると、リリースが日常化して、大変ではなくなる
  • 他のことでも、マネジメント上大変だと思っていたことが、そうでなくなっていく

つまり、変化を日常化することが、サービス開発の現場では必要である。

感想

サステナビリティというキーワードから、"まな板"を連想しました。

「Point of Sales」のシステムは、プラスティックのまな板に、「Point of Use」のシステムは、木のまな板に似ています。プラスティックのまな板は、買った時が一番良い状態で、あとは汚れていくだけ。一方、木のまな板は、使用していくうちに汚れや傷がついても、カンナをかけてメンテナンスすることができます。

先月、World Usability Dayに行って以来、システムにおけるサステナビリティとは何かを考えています。今回の発表でも触れられていた保守容易性や、追加開発のしやすさだけを自分は見ていましたが、これらは作り手側の発想でしかないと気づきました。倉貫さんがおっしゃるようなサービス提供者としての目線で持続可能なシステムを運用することも、サステナビリティを構成する重要な要素ですよね。

また、小さな組織になって良かったこととして述べられていた「プログラママーケティングを考えたり、営業が開発の中のことまで考えたりする」ことが、非常に魅力的だったのですが、それを大きな組織(SIer)の開発で実現するにはどうすればよいのかについて、考えさせられました。

個人的に、「仕事に線引きしないこと」と「効率化のための役割分担」のバランスの取り方について、最近悩んでいます。開発する人がビジネスについても考え、営業する人が開発についても考えるというのは、必要だと思います。しかし、大きな組織では役割分担が進んでいて、そもそもお互いの領域をどの程度分かり合う必要があるのか、それが許されるのかどうか(副作用がないかどうか)は、状況によっては難しい問題です。

大きな組織の中で、小さなチームを沢山作って開発すれば、できるのかもしれません。その場合、大規模案件はどうやって開発していくのか・・・など、色々考えたいことがでてきました。

世界一言語トークス(前/後)

2セッションとも参加しました。LT聞くの大好きなので、楽しかったです!

Ruby:nsgcさん

Rubyの簡単さと同じくらい伝わったのが、プログラムを書く理由としての「自分でも書ける」「書くのを楽しむ」「ちょっとしたことを便利にする」ことです。共感しました。

C GO:川島さん

風の噂で聞いてまさかと思っていましたが、本当にCからGOへという衝撃の展開。10分間にライブコーディングが2つも用意されていて、豪華でした。

Scala:牛尾さん

こんなプレゼン初めてみた・・・。ラスト1分は完全にカオス・・・。牛尾さんの術中に嵌った参加者が、「モナドォーー、悟りィーーー」と唱和するという伝説がつくられました。世界一すぎた。

Groovy:綿引さん

それ、Groovyだとこんなに短く書けるよ!という例あり、ジョジョ立ちありの発表。"たん"的に申し上げて、感謝しています:-) 楽しく描かせてもらいました。

JavaScript:高田さん

往年のJavaScriptの不憫さを思い起こさせる内容でした。じつは最近のJavaScriptをまともに勉強したことがないので、もっと使いたくなった。なにはともあれ、JavaScriptは、薄倖でヤンデレで小悪魔。ちぃ、おぼえた。

Python:yoshioriさん

Python使ってみたくなりました。懇親会のLTでも発表してくださったのですが、まずはあのバッドノウハウを試すためにPythonやりたいです>< ←間違ってる

萩本順三さん:匠Lab「開発者としての心」

大盛り上がりの言語トークスから一転。

萩本さんの開発者としての心の軌跡と、エンジニアが自分に打ち勝つための方法に関するお話。

エンジニアになりたての頃

萩本さんは、経理のお仕事から、エンジニアに憧れて転身された。最初は、ドキュメントチームで働くことになり、思っていた仕事と違って挫折を味わった。そこで、技術馬鹿になろうと決心した。幸い、学ぶ時間は沢山あった。当初、1年くらい技術に打ち込もうと考えていたが、気づくと夢中になり、30〜35歳の頃はずっと技術一筋。そこで、技術の鎧をまとった。

「技術の前では全員対等である」という信念のもと、社長とも戦った。そこには、常に怒りがあった。

方法論を作りはじめた頃

方法論に取組みはじめて、海外の大家のようにすぐには作れないことに気づいた。その時、今まで培ってきたものは、"偽りの知"であり、表層のものだったのではないかという思いにとらわれた。それ以降、丸裸になって、自分の言葉で語るようになった。

すると、敵が増えた。黙り込むと、外側からは負けを認めたと認識される。これは悔しかった。

泥沼と空虚を越えて、心の安定へ至る

今度は、敵との戦いがはじまった。泥沼だった。それに、一度戦いを乗り越えて、自分は大人になったと思っていたのに、そうでなかったと知って、空虚になった。

結局、自己主張と謙虚さのバランスを取ることで、心の安定を得るようになった。また、人を愛することも重要だった。愛とは、次の3つ。

  • 許す心:強さにもとづくもの
  • 優しさ:ゆとりがあるから発揮できるもの
  • 思いやり:他者への想像力から生まれるもの

今は「戦い」といえば自分との戦いであり、人と戦う気はまったくない、とのこと。

情熱を失わない戦略

萩本さんは、コンピュータ産業がどのように成長していくかに興味を持って、この業界に入った。客観的な目と冷静さを保っていると、情熱を持って戦うことは時に難しい。そのことを自覚していたため、いつも情熱を失わない戦略を持っていた。

重要なのは、「情熱を持続する」ことこそが能力だということ。そして、立場が変わったり、できることが増えたりしても、「自分の心は変化しないことを自覚する」こと。

では、戦略とは何か。ひとつは、高い志を持つこと。やりたいことの延長に、必ず社会との接点を持つこと。遠くを見る目を持つこと。たとえば、新しい技術に目を向けること。もうひとつは、今を努力すること。

知――守破離の「破」は"勘違い"

知とは、守破離。「守」は、学んだ知。「離」は、内なる知。そして、間にある「破」は、勘違い

しかし、この勘違いが重要である。自分にもできるんじゃないか、こういうこともできるんじゃないか、という勘違いから、何かが始まることもある。日本のエンジニアには、勘違いができない人が多い。ただし、「守」のない「破」は、ただの勘違いにすぎない。

内なる知には、それを信じる勇気が必要である。それこそ"勘違い"できるくらいでなければ、信じる勇気がわいてこないこともある。しかし、内なる知の蓄積が、社会を変えていくこともある。

意識していること。ひとつは、何事にも揺らぎがあるということ。たとえば、開発手法でも、ウォーターフォールアジャイルの間で、揺り戻しのようなことが起きる。また、ひとつは、単純な世界を意識すること。雲の上に真実があって、手を伸ばせば簡単に取れるのに、皆、見えずに苦しんでいる――そういうふうに考えるようにしているとのこと。

技・人・心を磨くということ
  • 技:モデル、プロセス、プロジェクト、要素技術
  • 人:興味、愛、会話
  • 心:気づき、覚悟、勇気、自信

以上が、萩本さんが考える技・人・心。開発者として、これらを育てていくとよいのではないか、という結びだった。

感想

いまの自分には難しくて、まだ理解できない部分も多かったです。しかし、忘れたくない内容でした。

特に、自分の心は変化しないというお話には、ぎくりとしました。自分は「一人前になりたい」「もっともっとプロになりたい」とよく思うけれど、もしかすると"一人前"や"プロフェッショナル"という幻想の状態に、過度な憧れを持っているのかもしれません。

萩本さんの講演を聴くのは初めてでしたが、どうしてこんなに胸にくるのかと、不思議に思いました。同じセッションに参加した人と、懇親会で「萩本さんは、挫折や失敗を語っているのに、物凄くカッコいい」という話になり、深く同意しました :-)

萩本さんのお話をもっと聞きたいです。とりあえず、ネット上で目についたものを読んでみました。

他にもありましたら、ぜひ教えてください。

papandaさん:クロージング

力強いクロージングセッション。

「乗り物(=手段)も大事だけど、それに加えて来年は、月(=システム開発で実現したいこと)についてもっと語ろう」というメッセージ、しっかり受け取りました。重力断ち切りたいネ!

2010年は、自分の月と乗り物を明確にする一年にします。クロージングを見て、そう決めました。

今年一番良かったことは、DevLOVEに出会えたことです。そして、DevLOVE2009のことは、一生忘れないような気がします。ありがとうございました。