それがぼくには楽しかったから
それがぼくには楽しかったから 全世界を巻き込んだリナックス革命の真実 (小プロ・ブックス)
- 作者: リーナストーバルズ,デビッドダイヤモンド,風見潤,中島洋
- 出版社/メーカー: 小学館プロダクション
- 発売日: 2001/05/10
- メディア: 単行本
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昨夜ふと、
- OSS活動に邁進している人たちは、いったい何に突き動かされてるのか
- いったいどんな考えを持てば、OSSの進化に水を差す行為ができるのか(たとえば、OSSプロダクトのテストケースを突然隠したりできるのか)
…ということが気になったので、図書館で『それがぼくには楽しかったから』を借りてきました。この本の存在は知っていましたが、邦題の響きがピンとこなくて、これまで読んでいませんでした。
読み終わった後の感想をちょっとメモ。
前者の疑問については、OSSに関わる身近な人たちと同じような意見が、リーナス氏の言葉によって語られていました。自分が知っている人たちは、よく「報酬はかならずしも金銭じゃない」と言います。リーナス氏によると、「すべてのものは、まずは生存のために、次に社会的秩序を保つために、そして最後には娯楽のために進化する」という理論になるようです。娯楽のため。Just For Fun. この本の原題が、究極的な答えのようです。
後者の疑問については、答えを得ることはできませんでした。しかし、リーナス氏が著作権や知的財産権について語った章は、とても興味深いです。
もし、知識や技術を支配することで金儲けをしようとするのなら、結局はうまくいかないだろう。それは独裁的だし、歴史を振り返れば、悪い結果しか見られない。
リーナス・トーバルズ:『それがぼくには楽しかったから』,小学館,p.318,2001.5.
企業は、他人や市場を支配したいという欲望のままに力を振るうこともできますが、他のやり方を考えることもできるはずで、どうするかは意思決定次第です。そして、意思決定を真にオープンな形で運営するのは、とても大変なことなのだろうと想像しました。
リーナス氏は、知的財産権が大きな収益を生むことや、だからこそ競い合って技術が進化することについても触れています。そのあたりも含めて第13章「知的財産権」は面白かったです。
全体を通して、進化それ自体について、リーナス氏が非常に肯定的に捉えていることが印象的でした。娯楽を指向する進化の過程では、淘汰も変化もごく自然なこと、という認識のようです。こういう考え方っていいなと思いました。