『プロのための Linuxシステム構築・運用技術』

Linuxの入門書は色々とつまみ食いをしてきたけれど、最近読んだこれが非常に良い本だと感じたので、メモ。

プロのための Linuxシステム構築・運用技術 (Software Design plus)

プロのための Linuxシステム構築・運用技術 (Software Design plus)

この本が役に立つ対象は、「仕事で顧客に提供するLinuxサーバ環境を構築運用する人」だ。特に、インフラやLinuxサーバに関する師匠が身近にいない環境で、自分が手を動かさなければならない状況なら、とても助けになってくれると思う。上級者から直接教わることができたり、斜め後ろから見て技を盗めたりする環境にいるなら、この本はそれほど必要にならないかもしれない。

Linuxを趣味や検証案件で使うレベルから、実案件で使うレベルの間のギャップを埋めるための知識を、この本は与えてくれる。遊びにしか使わない自宅マシンを、乏しい知識で偶然に頼ってマルチブートにするのは自由だ。また、仕事であっても、未熟なツールをただ叩くことが目的なら、検証用のマシンをテキトーにセットアップすることも許されるかもしれない*1。しかし、お客さまに提供する環境を構築するとなると、そうはいかない。

プロダクション環境を構築するには、この本のような方向性の情報が、基礎として必要だと思う。Linux関連書というと、内部構造を詳細に解説する本(『RUNNING LINUX』など)や、限定的な機能範囲に特化した逆引き本(各種コマンドリファレンス)が多い。もちろん、それらも重要なのだけれども、それだけでは足りない。

サーバ管理の仕事の一面は、セキュリティやパフォーマンス、可用性などのポリシーを定めて、それらを実現する設定を施すことだ。本書はその視点から書かれている。抽象度の高い運用設計の話に触れつつ、実現方法については手を動かすレベルにまで落としこまれている。そして、内容がわりと新しい。

最初は、薄いわりに高いなと思ったけれど、この内容なら、妥当、あるいは安いと思う。それに、薄いことは良いことだ。

ちなみに、先月下旬に、姉妹書が出ている。まだ読んでいないけれど、こちらも気になる。

プロのための Linuxシステム・ネットワーク管理技術 (Software Design plus)

プロのための Linuxシステム・ネットワーク管理技術 (Software Design plus)

*1:こんなことを書くと椅子を蹴られるかも。無論、まともに構築できるのなら、それに越したことはないです、ハイ。